先日、映画界の巨匠 市川崑監督が亡くなられた。
多くの人に惜しまれ、いろいろな人がテレビや雑誌などマスコミに登場し、その巨匠を懐かしんでいた。日本の映画界やマスコミの人がそれぞれ様々な関わりを話されているのを見ていると、その偉大さがわかる。
この偉大な市川監督が1983年頃だったと思うが、何とこの「エモトに会いたい!」という連絡があり、待ち合わせ場所の東京會舘のレストランに出向いた。
「君、文豪 谷崎潤一郎を知っているか?『細雪』という小説は?」と聞かれて、
「知りません、『ささアメ』は知っていますが・・・」と答えたら、歯の間に挟んだタバコの煙がプッと吹き出された。それを見て“何か不思議なオジサンだな”とその時思った。
「君、今度この映画を作ることになったが出ないか?」と言われた。
当時のエモトは、まあ阪神を辞めたばかりで、世の中のこともわからず、映画は子供の頃に西部劇を見て以来、ほとんど見たことがなかった。
「すみません、その気はないんですが、ちなみにどんな役ですか?」と聞いたら、「吉永小百合の結婚相手だ」と言われて一瞬頭が混乱した!
学生時代、小百合リストのエモトが生の吉永小百合さんに会えると思った瞬間、
「出てもいいんですが、私は素人なのでセリフがなければいいですけど・・・」と答えてしまった。
市川監督は膝に手をパンッと当てて
「それでいこう!」ということで、この世紀の映画、谷崎潤一郎『細雪』に小百合さまと共演することが決まったのだ。吉永小百合さんに会えるという一心で・・・。
生の小百合さまから撮影現場でサインをいただいた。そして撮影が無事終わって、映画が公開された。
まあその映画でも見るかと思い、先に見に行った知人に評判を聞いてみると「お前が突然スクリーンに出てくると、映画館ではクスッと笑いが起きる」と言われ、結局一度も映画館に足を運ぶことはなかった。
後日、別の取材で大庭みな子さんという有名な女流作家さんと対談することになった。
その中で、この映画の話と映画館には見に行っていないことを言うと、大庭さんは
「あなた、原作を読んでご覧なさい。あなたが演じた役は、人前にパッと現れると皆がクスッと笑う人物として書かれているので、まさしくその役にピッタリだったのだから、見に行けば良かったのに・・・」と言われた。そんなことでこの映画は、後日まで複雑な心境のまま年月を経て、未だに全編見たことはない。因みにその大庭さんも昨年亡くなられてしまった。
そして市川監督の話が出るたびに
「オレはすごい映画に、あの偉大な監督と超豪華な俳優さん達と一緒に出たんだ」と思うと、またしても自分の人生は複雑だなと思った。
今夜、BSで放送されるらしい。
市川監督、こんな素晴らしい機会を与えていただき有難うございました。
合掌
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